代用エンドポイント

  • 2023年7月2日
  • 2023年7月3日

surrogate endpoint(英)。臨床研究において,患者にとって本当に価値ある「真のエンドポイント」の代用として観測するエンドポイント。真のエンドポイントよりも低いコスト・短い期間で差を検出しやすいため用いられる。真のエンドポイントとの相関関係が確立されていることが 重要。

たとえば抗がん剤を使用する目的として真のエンドポイントの代表は「全生存期間の延長」である。しかし臨床試験において死亡までの期間を全員追跡するのはコストも時間ももかる。そこで「腫瘍サイズが小さくなること」や「少なくとも大きくさせず維持できた期間」を代用エンドポイントとして用いる。

他にも以下のようなバイオマーカーでの代用が有名。

  • 実際の認知機能低下ではなく「脳の画像変化」をみる
  • 実際の心筋梗塞イベントではなく「LDL-C値の低下」「HbA1cの低下」を見る。
  • 感染症による重症イベント(入院・酸素投与・ICU入室など)ではなく「ウイルス量低下」をみる

重要な点は「代用エンドポイント」で効果を示したように見えた薬剤でも,その後きちんと追跡し検証してみたら「真のエンドポイント」では差がつかなかないことがしばしばあることである。つまり代用エンドポイントだけで意思決定をすると,「データ」は改善させたが「患者は本質的には助かっていなかった」という事態になりかねないリスクをはらむことになる。

代用エンドポイントで新薬承認する “accelerated approval pathway” で上市されたあと,結局生存期間の延長を示せなかった薬剤たちが,そのままガイドラインに記載され使用され続ける問題もある.
Gyawali B et al. Regulatory and clinical consequences of negative confirmatory trials of accelerated approval cancer drugs: retrospective observational study. BMJ. Published online September 8, 2021:n1959. https://doi.org/10.1136/bmj.n1959

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