【告知】二次エンドポイントの問題をまとめた動画を公開しました

告知

医療統計の解説動画を Youtube に投稿しました!

今回のテーマは

二次エンドポイントと主要エンドポイントの違い

です。

臨床試験において

  • 盛られたり
  • すり替えられたり
  • 有意差主義に悪用されたり

…なにかと問題の多い「2次エンドポイント」ですが,主要エンドポイントとの違いを簡潔にまとめた動画になっています。

spinの問題,多重比較(多重検定)の問題,仮説探索/仮説検証の違い,安全性問題など,関連する話題を幅広くユル〜く復習できる構成になっています。それなりに充実した内容ですが(倍速で視聴すれば)わずか11 分程度と,大変お手軽です!

ただしαエラー,βエラーについては既知の内容として扱っていますので,これらについて基本的な概念が曖昧な方は,まずそちらの復習をして頂ければと思います(▼)。
合わせて読みたい

この記事では 〈αエラー〉と〈βエラー〉とは何なのか? ということについて,基本的内容に絞ってまとめます。 さらりと解説されて終わってしまうことが多い概念ですが,その本質的な部分をしっかり理解しておかないと,研究結果の解釈に大きな誤解[…]

今回の見どころ

今回の見どころは,二次エンドポイントの限界を

αエラーもβエラーも制御できていない

という一つのコメントであえてまとめてしまったところです。

二次エンドポイントというと,どうしても Spin(*)や多重比較の問題の無視で悪用されるイメージが強いかもしれませんが,これらは実は二次エンドポイントの弱点の半面(αエラーの問題)しか論じていません。

(*)主要エンドポイントで結果がいまいちだったときに二次エンドポイントの結果を強調する報道手法など

害のイベントと検出力不足問題

実際には βエラー側(=検出力不足)の問題も深刻で,臨床試験において対照群と比べて害が(統計学的有意に)増えなかったように見えても,ただの検出力不足にすぎないということはよくあります。

有益性を示すために(=主要エンドポイントとして)デザインする臨床試験では,害の検出力は当然担保されていません。

その点を棚上げした上で,たかだか第 III 相試験を終えたくらいの(=せいぜい数百人の投与実績しかない)状態で「この新薬は安全!」ということなど当然できないわけです。

実際には市販後調査が始まってからが有害事象のエビデンス構築は本番です。

しかしそんなことは「業界人はみんなわかっている常識」であり,プレスリリースや論文でそんなことをぐちぐち書く意義はありません。変なことを真面目に書いて株価に影響しても困るわけですから,そこはむしろ「懸念される傾向はなかった」などと書いてお茶を濁しておくのが常套手段というわけです。これが俗に「待てるなら新薬は数年寝かせとけ」といわれる所以ですね。

特に昨今は劇的な新薬はどんどん少なくなっており,小さな差を検出して少しずつ塗り固めていくようなアップデートが多いため,新薬に飛びつかなければならないような疾患はかなり減っているはずです。そのあたりのメッセージも込めたつもりです。

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αエラーもβエラーも制御できていない

今回の動画ではこの

第 III 相試験のサンプルサイズでは有害事象を検出しきれない

──という問題をあえて端的に「βエラー側の問題」として整理してしまい,「αエラー側の問題」(多重検定や Spin)とひとまとめに解説したのが1つの工夫でした。

これらはしばしば次元の違う問題として扱われますが,こうやって揃えてみることで

  • P値が大きくても小さくても,有意に見えても見えなくても,そのまま食いつくことはできない
  • 結局 “結論じみたこと” は何についても言えない
  • 「謙虚になろう」

と,二次エンドポイントの限界をシンプルにまとめることができたと思います。

次回予告

今後も引き続き

シリーズ「RCTを吟味する」

と題して動画を投稿していきます。

当面は引き続きアウトカムに関する部分に着目し,以下(▼)の内容を複数回に分けて構成し直していきます。

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この記事では,「医学系 RCT を正しく読む」ための必須知識となる,エンドポイントの種類についてまとめます。 エンドポイントの種類まとめ 真のエンドポイントと代用エンドポイント ハードエンドポイントとソフトエンドポイント 主要エンドポイ[…]

次回は「複合エンドポイント」を扱う予定です。またチェックしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!

余談

今回は前回から3ヶ月も間隔が空いてしまい,このスピードの遅さには問題意識を感じております💦

が,どうも本業の忙しさに加え(この動画で扱っている内容とは全く別の)自主学習の時間も確保不十分で,なかなかままならぬものですね…

とりあえず「(めっちゃ間隔あくけど一応)シリーズなんですよ」ということを強調するため,過去のサムネイルを入れ替えて統一感を出すなど小手先のテクニックに走り始めました😅

シリーズ「RCTを吟味する」

並べてみるとそこはかとなくダークな感じになってしまっておりますが,まあこれはこれでアリなのではないかと一人で納得しております。

登録者1750人達成

なおこのチャンネルですが,先日登録者が1750人を超えておりました!👏

全然動画を上げていないのにジワジワ伸びていることに関しては,本当に感謝しかありません。2000の大台も見えてきて嬉しい限りです。登録者数が増えることでほかの方の目にもつきやすくなるのではないかと期待しております。

個人的に「RCT の批判的吟味の基本的手法」などはもっと遥かに広く普及すべきで,科学リテラシーとして一般教養レベルになるべきであるという信念で活動を続けています。その裾野が広がっている実感が数字として得られると,モチベーションが上がります。

これからも少しずつ種まき🌱 を続けたいと思いますので,今後とも何卒よろしくお願い致します🙇‍♀️🙇

ちなみに Youtube は「チャンネル登録者数1000+連続年間4000時間再生」で広告が入れられるようになる(収益化が可能になる)のですが,動画の数が少なすぎていまだに後者は全然満たせておりません😅 使用している動画作成ソフト(vyond)が年間 650ドルも貪る燃費の悪さのためむしろ大赤字でございまして,どこかでこのソフトの使用は卒業するかもしれません…
※共同制作者のブログはこちら

[おすすめ本紹介]

Users’ Guides to the Medical Literature


タイトル通り「医学論文を現場でどう応用するか?」迷える臨床家のためのユーザーズガイド。Tips 集のような構成で,どこからでもつまみ読みできます(通読向きではない)。医学論文の批判的吟味を学ぶにあたり 1 冊だけ選ぶならコレ,という極めて網羅性の高い一冊です。著者 Gordon Guyatt 氏は “EBM” という言葉を作った張本人。分厚い本ですが,気軽に持ち歩ける Kindle 版はオススメです。邦訳版もあります。

医学文献ユーザーズガイド 第3版


表紙が全然違いますが「Users’ Guides to the Medical Literature (JAMA)」の邦訳版。医学文献を批判的吟味するためのTips集としてかなりの網羅性を誇る代表的な一冊です。唯一の欠点は Kindle版がないこと(英語版はある)と,和訳が気になる部分が結構あること。2つでした。原著とセットで手に入れると最強の気分を味わえます。鈍器としても使えます

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