上原ひろみの音楽がアツすぎるアニメ映画 BLUE GIANT【感想】

今回は息抜きで,バッチバチに個人的シュミなお話です。

上原ひろみさんをこよなく愛する私としては当然「公開直後に映画館で観る」以外の選択肢はありませんでしたよねえ。アレです。

映画『BLUE GIANT』。 いやあ,よかったです。

(※以下,ただのオタトークです)

音楽が主役。

一言で言うとこの映画は

アニメ映像をつまみ、、、にして音楽を聴く

という作品だったかと思います。

主役はあくまで音楽。 上原ひろみ作曲の素晴らしい劇中曲の数々です。原作の圧倒的熱量をそのまま楽曲に落とし込んだような楽曲たち。その彩りとしてアニメーション映像があり,ドラム玉田の成長物語がある。そんな作品でした。

ドラム玉田の成長物語

本作は,原作のうち主人公ダイの成長パートである仙台編をガッツリカットして東京編にフォーカスしています。そのためどちらかというとすでに主人公ダイのサックス演奏スキルは既に確立されていて,ドラム玉田の成長物語が主軸になっています。

原作ベースの脚本だがアレンジも

脚本は原作をベースにしていますが,映画ならではのアレンジもありました。

原作でもユキノリがやっぱり可哀想過ぎて

もうちょっとなんとかならんかったんかこの展開‥

とは思うのですが,映画はまだ救いのある内容にしてくれていました。

|ネタバレ注意
私はドイツ編以降の原作未読ですが,ユキノリはこのあと「米国の音楽大学に作曲留学」に行くのだとか。完全に上原ひろみさん(バークリー大学作曲科)リスペクトの設定ですね。今後ユキノリは作曲家として成長するのか,はたまた左手のピアニストとして大躍進するのか… 。まだ希望がある終わり方になっていたとはいえ,やはり胸が痛くなりますよね あの展開。しんどいなあ。
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アニメの音楽表現

音楽のアニメ表現ということに関しては,最近本当に素晴らしいものがどんどん出てきていますよね。

2022年アニメの「ぼっち・ざ・ろっく!」にも腰を抜かしました。今やまず「音楽にこだわる」のは当然。プロにあえて、、、下手な演奏・息の合わないズレたバンド演奏をレコーディングをさせる。そして徐々に上手くなっていく。ライブ演奏中のハプニングも楽曲ごとレコーディングしてアニメで演出しきる

音楽好きとしてもアニメ好きとしてもアツい時代がやってまいりました。

本作『BLUE GIANT』でも,最初のライブ用音源で「本当にズレズレなやばい初心者風演奏を収録」していたのはさすがです。「あちゃあ…//」と共感性羞恥を催すレベルの「いかにも初心者ドラム」感。すごかった。下手な演奏の再現もまたプロです。すげえよ。わたくし感動しちゃいましたよ。

しかしそんな玉田が作中でどんどん成長していき,最終的にどんどん完成されていく。その過程も楽しめる映画でした。

3D作画はもうひとつ

1つだけすこし残念だったのは,演奏中に露骨な 3DCG になるシーンがしばしばあり,そこのクオリティが荒かったことです。3Dポリゴン感が残っちゃってました。

めちゃくちゃアツい作画シーンもたくさんあったのですが,さすがに全て手書きは(予算的にも)しんどすぎたのでしょうね…1曲1曲の演奏時間も長いですし。

ただ,そこも手書きでゴリゴリぬるぬる描いてくれていたら本当に伝説的な作品になったんじゃないかと思います。

さいきん私も MAPPA やボンズや Ufotable のガチ作画アニメを見慣れ過ぎて目が肥えてしまったのか,自分の中での要求レベルが高くなってしまっている自覚はあります。

上原ひろみ作品集として

ともあれ本作,やはり主役は音楽です。作画なんて細けえことは二の次でいいんです。この映画は上原ひろみ作品集として鑑賞すべきものなのです(圧倒的主観)。

大変贅沢なことに,劇中で主人公たちのトリオ JASS(サックス・ピアノ・ドラム)が演奏する主要4曲に加え,30曲近い BGM をすべて上原ひろみさんが作曲・監修しているんですよね。というわけで幕間に流れる劇中音楽1つ1つがやっぱり最高にカッコいい。「世界一のジャズプレイヤーになる」ダイの物語を,実際に世界で活躍するジャズプレイヤーが監修しているという素晴らしさ。

アニメ楽曲のサウンドトラックで最高のものといえばダントツ菅野よう子さんのカウボーイビバップというイメージがありましたが,これはもしかすると塗り替えられてしまったかもしれません。

今回の推し曲

楽曲は正直全て最高だったんですが,個人的に推したいのはまずやはり「N.E.W」(フル音源)です。もちろんJASS代表曲「FIRST NOTE」の7拍子も素晴らしいのですが,JASS のライブ曲から1つ選ぶならダントツ「N.E.W」でした。

N.E.W (JASSのライブ曲)

(※注:上の Spotify 埋め込みは,曲頭からは流れません)

まずサックスの煽りからの入りがたまらんです。映画館でも鳥肌たちました。そしてピアノで再現するウォーキングベースも最高。

ウォーキングベースラインを入れたいけどベーシストがいない?ならピアニストが弾けば良いじゃない。左手で。

そういうことです

また 3:00〜のピアノソロはもうユキノリっていうかもうほとんど上原ひろみさんが憑依しちゃってるんですが,最高なんです。最終的にサックスと煽り合いをして終盤に向かっていく構成も素敵。スピーディでアフロキューバンテイストなドラムも大変アタクシ好みでした。

まあ玉田が大学の単位を全て捨ててフルコミットしていたにしても初心者が数ヶ月でこんなキレのあるアフロキューバン叩けるようになんてならんですけどね!!普通は!

ともかく,ぜひ多くの方に劇場で聴いて頂きたい1曲です。この1曲を100%楽しむというためだけに映画館に行く価値は十分あると思います。

推しの劇中BGM

またJASSの曲でない(主人公たちが演奏する曲でない)劇中BGMも最高なものばかり。特に私は以下の 3曲が推しでした。

アニメBGMなので全部 90 秒程度の短い楽曲なのですが,どれも個性が立っていて良いです。一流の寿司屋で熟練寿司職人が一貫ずつ「スっ…」と最高のネタを出してくるあの感じです(語彙が迷走)。

Impressions は上原ひろみ作曲ではなく古典的な名曲ですが,これで始まるオープニングで煽られる期待感は半端なかったです。Beginningの小気味良い縦ノリで絶妙に表現されるワクワク感も最高でした。Forwardはもうこのままなんかのテーマ曲にしてくれっていう完成度。入り方もHiromi The Trio Project を思い出す素晴らしさだしウッドベースたまらんです。

他にも色々語彙を失ってしまうクオリティで,メインテーマの1つと思われる「BLUE GIANT」(OST29)の哀愁には泣きましたし「Kick off」(OST15)の同音連打は “いかにも上原ひろみ節” という感じでファンとしてはニッコリしてしまいました。……と付け加えていくと一生終わらないので割愛。

作曲家 上原ひろみ イズ最高

上原ひろみさんはピアニスト・ソリストとして言うまでもなくワールドクラスの超一流ですが,同時にやはり作曲家としても本当に魅力的だと思います。

TrioならTrioとして最高の曲を作りますし,レキシとコラボするときは最高のアレンジをしますし,クインテットではストリングスの絡みが最高の曲を作りますし,アニメ用に小ぶりなジャズ音楽もかっこよく作れる。うーん……しゅき。

『BLUE GIANT』もやはり多くの方にぜひ映画館の爆音で鑑賞していただきたいですね。自分は数百円追加課金してドルビーなんちゃらっていういい音響の映画館で観ましたが,やはり映画館で聴く音楽は格別でした。

みなさんもぜひ本作,劇場で聴いて(観て)みてください。

支払うのはもはや映画代ではありません。ライブのチャージです

このままの流れでぜひライブへ

また『BLUE GIANT』で上原ひろみさんのことを初めて知った方には,是非彼女のライブを一度見てほしいなぁと思います。彼女は演奏が超一流なので,ライブこそ最高なんです。 ライブが音源を超えるのがデフォなんです。

わたくし2022年末にクインテットのライブをホールで聞いた時は涙しながら昇天しそうになりましたからね。仕事で病んで闇属性になっていたのに浄化されすぎてあわやフェアリータイプになるところでした。「人生のエンディングかな?」って思いましたよ。ホールで聴く音楽で涙を流すのは我ながら初めての経験でした。また聴きに行きたい‥

はい。まあこの辺にしておきます。

以上 「BLUE GIANT の感想」と見せかけた上原ひろみさんの推し活でした。

おまけ

最後に上原ひろみさんのお気に入りの動画貼っときます。レキシ vs オシャレキシのライブは全国民の音楽の授業で必修にしてほしい

レキシ vs オシャレキシ

Youtubeへ

伝説のライブ。もちろん生で見に行きました。音楽ってこうだよなあ。と何度もニッコリを禁じ得ないライブでした。きらきら武士もハニワニワも salt & stone もなんもかんも全部最高でしたが,著作権の関係で DVD化されておらず。他アーティストの楽曲歌唱なども含まれ権利関係が複雑になりソフト化が困難になってしまったからと思われます。今後もパッケージとして世に出回ることはおそらくありませんが,Youtubeで何度も蘇っているので,この動画が消えてもまたどこかで見れると思います。

Hiromi the trio project

Anthony Jackson と Simon Philipsという超弩級世界的プレイヤーと Hiromi お姉様が組んだ伝説のトリオ。私が上原ひろみさんの大ファンになったキッカケのプロジェクトでした。っていうかこんなにカッコいいライブある? ※ただしこのライブはドラムがサイモンではなく Steve Smith です。サイモンの代わりにスティーブスミスってのも何かもうぶっ飛んでますが,とにかく最&高です。

上原ひろみさんのインタビュー記事

FRaU | 講談社

日本人アーティスト唯一となるブルーノート・ニューヨークでの13年連続公演を開催、世界中で愛されるピアニスト・上原ひろみさ…

[おすすめ本紹介]

Users’ Guides to the Medical Literature


タイトル通り「医学論文を現場でどう応用するか?」迷える臨床家のためのユーザーズガイド。Tips 集のような構成で,どこからでもつまみ読みできます(通読向きではない)。医学論文の批判的吟味を学ぶにあたり 1 冊だけ選ぶならコレ,という極めて網羅性の高い一冊です。著者 Gordon Guyatt 氏は “EBM” という言葉を作った張本人。分厚い本ですが,気軽に持ち歩ける Kindle 版はオススメです。邦訳版もあります。


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