オーディオブックのキャンペーンにまんまとノせられて今更ながら「夢を叶えるゾウ」を購入し,読了(聴了?)しました。
いや,本当シンプルに良かったです。買ってよかった。忘れてしまわないうちに,感想と気づきをまとめてみます!
何気にこのブログでの書籍レビューは初めてですね。
夢を叶えるゾウ I |水野敬也
ウサンくさい神様ガネーシャと青年の対話形式ですすむ物語。ガネーシャに課された〈課題〉を1つ1つ実践しながら,少しずつ成長していく主人公の姿を描きます。〈実際に・本当に・行動に移す〉ということの重要性を強い言葉で伝えてくれる名著。
本の概要
本書は,ごく平凡なサラリーマンが「神様」を名乗る謎の生物・ガネーシャの指南によって自らの人生を変えていく物語です。
対話形式で進むスタイルが特長
「平凡で終わりたくない!」という情熱を秘めたサラリーマンの主人公(自分)と,胡散臭いエセ関西弁を操る謎のマスコット〈ガネーシャ〉が軽妙なやりとりをしながら物語が進みます。
課題
ガネーシャが成功したい主人公のために,各章ごとに〈課題〉を出してきます。
読者が主人公と一緒にその〈課題〉をこなしていく中で,〈成功〉のために大切なマインドセットを身につけていく,という構成です。
数多の名言の引用
作中,ガネーシャの発言に説得力を持たせるため,非常に多くの偉人の名言の引用が行われ,それもまた勉強になります。
実際,筆者の方はこの本を書くにあたって相当下調べされたようです。
「嫌われる勇気」との共通点
対話方式で自己啓発系といえば,名著「嫌われる勇気」とも近いものがありますね。
本書は 2007 年発表で,嫌われる勇気は 2013 年。
実は「嫌われる勇気」の方が後発だということは今回調べてみて初めて知りました。
著者は何者?
普段は割と「筆者が何者か」というのを確認してから本を購入することが多いのですが,今回は聞き終わってから初めて筆者のプロフィールを確認しました。
- 自己啓発系によくある内容が小綺麗にまとまっていた感じがしたので,もともとそういう界隈の方なのかと思いきや,純粋な作家さんだったので少し驚きました。
- 「そういう界隈の人」じゃないということを後から知って,自分はむしろ逆に感銘を受けました。
- 筆者のかた自身,相当な数の自己啓発本を読んでこられたそうです。その上で,自己啓発本にありがちな「上から目線」に違和感を感じ,「上から目線じゃない自己啓発」ということを意図して書いた本だそうです。
夢をかなえたい主人公が、神様・ガネーシャの示す課題に果敢に挑んでいく自己啓発小説『夢をかなえるゾウ』(文響社)。累計40…
特に本著を読後の方は,興味があればぜひ。
なぜこの本を手に取ったか
キッカケ
この本を手にとった最大のキッカケは 「audiobook.jp」のキャンペーンで安く買えたから,です😅
書店でも何度か見かけて気にはなっていたので「ちょうどタイミングが合った」という感じでした。1000 円近く値引きされているのを見るや否や,速攻でポチりました。
たまに有名作品が半額近くまで値引きされていることがあるのは audiobook.jp のニクいところですね。
ただし単品だけ買うなら Audible では 3000 円,Audiobook.jp では 1760 円と明らかに後者が 🉐 です。ただ,ナレーターの方も異なるみたいなので,別商品と考えた方が良さそうです。
読書前の期待
いわゆる〈自己啓発系〉の中でも相当知名度の高いベストセラーなので,以前に読んで面白かった「嫌われる勇気」くらいのインパクトを期待して買いました。
本書の内容
「実際に行動すること」の大切さ
おそらく本書最大のテーマと思われ,作中一貫して語られ続けるのが
です。
成功したい主人公のもとに現れたクセのド強い神ガネーシャが繰り出す数多くの〈課題〉。それらを1つ1つ「実際に行動にうつしていく」ことで主人公が成長する,という構成です。
だと感じます。
最初の〈課題〉
です。
そして読者を代弁するかのように,そんなことして「意味」あるのか? と食い下がる主人公に,ガネーシャは「自分が成功できないのはそのマインドセットそのものにある」と鋭く指摘します。
イチロー選手が仕事道具をめちゃくちゃ大切にしていたことを引き合いにして,
自分が会社行く時も,営業で外回りする時も,カラオケ行ってバカ騒ぎしてる時も, 靴はずっと気張って支えてくれとんのや。そういう自分支えてくえてるもん大事にできんやつが成功するか,アホ!
と言い放ちます。
本書は最初の〈課題〉である靴磨きの時点から,強くそのメッセージを発してきます。
本書を通して出される〈課題〉は 29 個
その後,本書では実際に 29 個もの〈課題〉が順に出されていきます。
が,実際には
に分けて構成されています。
- | 作中 24 の〈課題〉
-
- 靴をみがく
- コンビニでお釣りを募金する
- 食事を腹八分におさえる
- 人が欲しがっているものを先取りする
- 会った人を笑わせる
- トイレ掃除をする
- まっすぐ帰宅する
- その日頑張れた自分をホメる
- 一日何かをやめてみる
- 決めたことを続けるための環境を作る
- 毎朝,全身鏡を見て身なりを整える
- 自分が一番得意なことを人に聞く
- 自分の苦手なことを人に聞く
- 夢を楽しく想像する
- 「運が良い」と口に出して言う
- ただでもらう
- 明日の準備をする
- 身近にいる一番大切な人を喜ばせる
- 誰か一人のいいところを見つけてホメる
- 人の長所を盗む
- 求人情報誌を見る
- お参りに行く
- 人気店に入り,人気の理由を観察する
- プレゼントをして驚かせる
印象に残った〈課題〉
24の〈課題〉の中で,特に印象に残ったものは以下の 5 つでした。
- 人が欲しがっているものを先取りする
- 1日何かをやめてみる
- 自分が一番得意なこと,苦手なことを人に聞く
- 身近にいる一番大切な人を喜ばせる
- 誰か一人のいいところを見つけてホメる
4. 「人が欲しがっているものを先取りする」
“If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.” ── Henry Ford
もし顧客に彼らの望むものを聞いていたら,彼らは「もっと速く走る馬が欲しい」と答えていただろう ── ヘンリーフォード
ビジネスの得意なやつは,人の欲を満たすことが得意
世の中の人たちが何を求めているかが分かるやつは,事業始めても上手く行く。上司の欲が分かっているやつはそれだけ早く出世する。
普段会う人,先輩,後輩,上司,家族 ── 人それぞれ真に欲しているものは異なります。自分本位にならず,相手の欲について考える余裕を持ちたいものです。
9. 「1日何かをやめてみる」
ぱんぱんに入った器から何かを 外に出すんや。
そしたら空いた場所に新しい何かが入ってくる
何かを手に入れるには,相応の代償を払う必要がある
等価交換の法則ですね。何かを始めるには,何かをやめて自分の時間を取り戻さなければならない。
- ブログを書く時間を確保するには,ゲームやアニメやしょうもないニュース番組や SNS に費やす時間を捨てなければならない。
- 家族とゆっくり時間を過ごすためには,全自動食器洗い乾燥機と乾燥機付きドラム式洗濯機を買わなければならない!
12. – 13.「自分が一番得意なこと,苦手なことを人に聞く」
自分の仕事が価値を生んでるかを決めるのはお客さん,つまり自分以外の誰か
人を幸せにした分だけお金がもらえる。それが〈サービス〉。
その〈サービス〉の価値を決めるのは,当然お客さん。
自分が本当に人の為になれる──つまり良質な〈サービス〉を提供できる ── ことは,一体何なのか?
自分のことを客観的に評価するのはどうしても難しい。だからこそ「人に聞いてみよう」という論旨です。いや本当に,ご尤もだと思いました。
自分の適性は多分,いや絶対,他人の方がよく知ってます。
18. 「身近にいる一番大切な人を喜ばせる」
人間ちゅうのは不思議な生き物でな。自分にとってどうでもええ人には気い遣いよるくせに,一番お世話になった人や一番自分を好きでいてくれる人,つまり,自分にとって一番大事な人を一番ぞんざいに扱うんや
耳の痛いセリフです。
普段,親や家族を喜ばせることができているか?
正直,自分の仕事や自分のやりたいことに手一杯になってしまっている感は常にあります。本当に耳が痛い。
クレーム言うてきたり,大変なお客さんも大事にせなあかん。でもお前を愛してくれるお客さんに最高のおもてなしをするんは当然やないか。ええお客さんやからいうて甘えとったらあかんで
これも結構重要な考え方だなあと感じました。
クレームつけてくるような人に長い時間をとって,いわゆる「いいお客さん」をルーチンワーク的に「捌いていく」というのは,実は本来の優先順位が逆転してしまっているわけです。
お互い気持ちよく仕事できる人こそ尊重して,喜ばせる──つまり最大限のサービスを行う──べきであって,愚痴りたいだけのクレーマーなんて,本来は距離をおくべき存在であるはず。
相手の行動に〈反応〉して対応を決めてしまうのではなく,こちらが相手を大切にしたいかどうか,という部分こそ本質的に重要な部分なんですよね。本来は。
19「誰か一人のいいところを見つけてホメる」
成功したいんやったら絶対誰かの助けもらわんと無理やねん
二酸化炭素吐くのと同じくらいナチュラルにホメ言葉言えや!
この〈課題〉の中では,古典的名著「人を動かす」でも紹介されていた鉄鋼王アンドリュー・カーネギーのエピソードが紹介されていました。
いかにみんなが「自分のこと」しか考えていなくて,褒められたがっているか。いかにみんなが自分の「名前」を大事にしているか。そうした部分に踏み込んで,まず相手を承認することから関係性は始まるのだと,本書は主張しています。
自然な形で感謝をしたり,人を立てたりして,その人の肯定感をスマートに高められる人間になりたいものです。
課題④〈人が欲しがっているものを先取りする〉を突き詰めていっても,最終的には同じところに到達するようにも思いました。
- |アドラー心理学では〈褒める〉は禁忌
- なお「嫌われる勇気」で有名なアドラー心理学において「褒める」という行為はむしろ逆で,禁忌扱いです。この点については本記事の後半で,自分の考えた落とし所を書いてみたいと思います。
強烈な皮肉とカタルシス
さて本題はここからです。
実は,結局本書のメッセージの全てがギュギュッと凝集されているのは,最終章 ── 5 つの〈最後の課題〉です。
それまでの 24 の〈課題〉はもはやそこに至る壮大な布石でしかありません。
内容の本質としては,
とすら感じます。
しかし,実は 24 個も先にやらせていたからこそ,5つの〈最後の課題〉が生きてくる,というのが本書の構成の非常に巧いところです。
大きな転換点
本書は最終章に入る前,大きな転換点を迎えます。
そこが非常に強烈で,面白く感じました。いわゆる起承転結の「転」の部分です。
なんとそれまで 1つ1つ提示されコツコツやってきた 24 個もの〈課題〉が,実は「主人公が知っていたはずのこと」なのだと突きつけられます。
ワシの教えてきたことには何の目新しさもないんやで
ワシが教えてきたこと,実は,
自分の本棚に入ってる本に書いてあることなんや
作中最も衝撃的なセリフです。
そしてかなりの〈メタ発言〉でもあり,そこがまた強烈な印象を植え込んできます。
強烈な皮肉とメタ発言
「こんな本を手に取るあなたたちは,どうせ他にもこんな本読んできたんでしょう。どっかで聞いてきたことばっかりでしょう。そりゃそうです。そういう本で言われてる内容を改めて書いただけですもん。でもあなたは〈行動〉に移してこなかったんでしょ?だから結局変われなくて,またこういう本読んじゃってるんでしょ??」
と言わんばかり,強烈な皮肉になっています。
ワシが教えてきたこと,実は,
自分の本棚に入ってる本に書いてあることなんや
正直この一文を読んだ(聴いた)だけでも,この一冊を買った価値はあったと思いました。
ここで読者にカタルシスを与えるために,あるいは一気に突き落とすために,24個もコツコツやらせてきたんだなあと思うと,素直に感動してしまいました。
構成が巧いです。本当に。
再度強調される「行動を変える」ことの重要性
そしてこの強烈な皮肉の後,改めて「行動する」ことの重要性が強調されます。
自分は今,『座っとる』だけや。この意味,分かるか?確かに自分はこうやってワシの話を聞いとる。でもな,今,自分は何かを学んで,知識を吸収して,成長しとる思てるかもしらんけど,本当はな,成長した気になっとるだけなんや。ええか?知識を頭に入れるだけだは人間は絶対に変われへん。人間が変われるのは,『立って,何かをした時だけ』や
自己啓発本を読んで「やってやるぞ」という気分になったところで,実際の行動が伴わなければ意味がない。
そんなものは「成功するかもしれない」という高揚感だけを前借りして気持ちよくなってるだけだ,とバッサリ切り捨てます。
多くの読者がハッとさせられるクライマックスです。
5つの〈最後の課題〉
物語が最高潮に達したところで,本質に迫る5つの〈最後の課題〉へと進んでいきます。
I. やらずに後悔していることを今日から始める
1つ目は,「やらずに後悔していることを今日から始める」です。ポイントは「今日から始める」の部分です。
今日やらんと一生後悔するで。みんなそうやって死んでくんや。もし『みんな』と『自分』に境界線引くチャンスがあるとしたら,それは『今』以外ないで
みんな知ってんねん。やりたいことやって後悔せんような人生送ったほうが幸せになれるてな。でもやらへんねん。何でや?それは,今の自分と同じこと考えてるからや。収入。世間体。不安。同じやで。人を縛ってる鎖なんてみんな同じなんや
変えるならそれは『今』や。『今』何か一歩踏み出さんと。自分それ,やらんまま死んでいくで
それやらんかったら,自分,一生隣の芝生は青いままやで。隣の青い芝生見ながら死んでいくんやで
いやあ,本当にこの章からガツンガツン畳みかけてきます。
痛い痛い。辛い。キツい。胸が痛いです。耳も痛いです。ごめんなさいごめんなさいッヒィ!ってなります。
何度も何度も,細かい言葉尻を変えながらも,〈行動すること〉の重要性を畳みかけられ,とにかく何か始めなければ,という気持ちに強くさせてくれます。
II. サービスとして夢を語る
2つ目の〈最後の課題〉は,「サービスとして夢を語る」です。
自分の夢をかなえることが同時に人の夢をかなえることになれば,みんなが応援してくれるやろ。そういう夢思い描くためには,人の持ってる欲や人の持ってる夢に注目せなあかん。
「人を喜ばせる」だとか,「人にサービスする」だとか,「人の夢をかなえる」だとか,「自分の夢をみんなの夢にまで育てる」だとか,色々と表現は異なりますが,本書で繰り返し述べられることは根本的に同一です。
たくさんの人を幸せにしているから,みんなから喜ばれ,認められ,お金が支払われる。それがサービスの本質。
結局,たった一つの〈成功〉の秘訣は「どれだけ人を幸せにできるか」というわけです。
〈自分の夢〉を〈みんなの夢〉にしてしまう。その天才として,作中ではスティーブ・ジョブズが紹介されています。
Do you want to sell sugared water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world? — Steve Jobs
君はこのまま一生砂糖水を売り続けたいのか,それとも私と一緒に世界を変えるか?(ペプシコーラ社から John Sculley を引き抜いたときの殺し文句)
III. 人の成功をサポートする
3つ目の〈最後の課題〉は,「人の成功をサポートする」です。
全ての仕事は,何かしらの形で他人の成功をサポートしていると呼べる
だから,他人の成功をサポートすることが楽しくなれば,きっと何をやってもうまくいく。
IV. 応募する
今日から変わると興奮して思っても,具体的な行動や環境を変えなければ,人は変わることなんてできない。
本書の最大のテーマである「行動することの重要性」が,最終盤のここでもう一度強く強調されます。
何か興味があることがあったら,とにかくまずポチってみろよと。
今思えば,昔から兄貴も同じことを教えてくれていました。
「ポチる」「ポチる」だなんてそんな言葉は使う必要がねーんです。
『ポチった』なら使ってもいいッ!
ということ。なぜ今まで忘れていたのでしょう。これからは気になった本はどんどん書います。すみません。
そして最後は?
さすがにここまで書いてしまうとネタバレが過ぎますので,記載は控えたいと思います。ぜひ本書を手にとってみてください。
最後の項目も,自分に実践できているかと言われると,やっぱりなかなかできていません。そういうところがまだまだ人間的に未熟だなあと思う次第です。
夢を叶えるゾウ I |水野敬也
ウサンくさい神様ガネーシャと青年の対話形式ですすむ物語。ガネーシャに課された〈課題〉を1つ1つ実践しながら,少しずつ成長していく主人公の姿を描きます。〈実際に・本当に・行動に移す〉ということの重要性を強い言葉で伝えてくれる名著。
全体を通しての感想
良かったところ,響いたところ
やはり5つの〈最後の課題〉と,そこに至る直前の皮肉がよかったです。
それやらんかったら,自分,一生隣の芝生は青いままやで。
隣の青い芝生見ながら死んでいくんやで。
強烈すぎる。キツいですね。
気になったところ
基本的にはいい読書をさせてもらった,という気持ちでいっぱいですが,いくつか気になった点もありましたので,一応ご紹介させていただきます。
- ガネーシャの口調のクセ
- けったいなBGMとSE(audiobookのみ)
- 地の文のクセ
ガネーシャの口調のクセ
まず,このクセです。本当クセが強いです(笑)。
ただこれは賛否両論あるところかと思います。本書のいいところでもあり,気になるところでもある。
ただ,自分はオーディオブックで聞いたせいか,結構気になってしまうシーンがありました。文面で見ると気にならない可能性もありますが,ただとにかくガネーシャのクセの強い声を聞いていると「いや,なんやねん!」ってなるところ,正直ありました。
けったいなBGMとSE
これは完全にオーディオブック特有の演出に関する点ですが,SEとBGMのクセが結構気になりました。
- おそらく狙ってやっているのだと思うのですが,その演出のせいで余計にクサくなってしまっているのが勿体なく感じました。
- 2.5倍速で聴いていたせいで,余計に BGM とSEがカオスに😅
地の文のクセ
これも構成上やむを得ないことだと思うのですが,基本的に本書はいわゆる「地の文」も全て主人公の思考になっています。一人称視点の小説みたいなものです。
そのため,どうしても若干クサい感じが出てしまいます。「文体が合わなかった」という人はいるかもしれないなあという印象です。
逆にこの点は audiobook が合っていると感じたポイントでもあります。
主人公の思考が「地の文」になっていても,一種の「語り」として耳から聴けるので,あまり違和感がありませんでした。
嫌われる勇気との対比で考えたこと
対話形式という文章スタイル
先にも述べましたが〈対話形式で読者に気づきを与える〉というスタイルは,同じく自己啓発系でめちゃくちゃベストセラーになった名著「嫌われる勇気」も同じです。
ただ「読者の立ち位置」という点では真逆になっていて,その点は興味深く感じました。
「嫌われる勇気」に登場するのは,血気盛んですぐ声を荒らげちゃう青年と,達観した哲人です。しかし青年があまりに情熱的すぎるため,どちらかというと読者の視点は引いた立場にさせられます。
つまり,読んでいるうちに気づいたら哲人側の視点になっている,というような仕掛けがある作品でした。後半になればなるほど読者が「おいおい青年,まああ落ち着けよ」という気持ちになってくる。
それに対して本書はとにかくシンプルに,指導者側である「ガネーシャ」のクセが強い。というかちょっと普通にウザい(笑)。結果として途中,何度も「何やねん!」ってなるところがあります。
それも演出というか,主人公と読者を一体化させるための試みだと思います。とにかく読者の立場は,あくまで主人公側です。
そうすることで,1つ1つの〈課題〉で取り上げられるメッセージ性が机上の空論だとか上から目線のメッセージではなく,スッと胸に落ちてくる印象がありました。この点はおそらく狙って作られているのではないかと思います。
〈褒める〉という行為の扱い
本著では,19 個目の課題として「誰か一人のいいところを見つけてホメる」というものが出てきます。
成功したいんやったら絶対誰かの助けもらわんと無理やねん
二酸化炭素吐くのと同じくらいナチュラルにホメ言葉言えや!
とにかく褒めろ!褒めまくれ!と言わんばかりの論旨です。
一方「嫌われる勇気」の作中で語られる重要な原則は「褒めない」です。
哲人曰く
褒めるという行為には「能力のある人が,能力のない人に下す評価」という側面がある
そこには感謝も尊敬も存在しない
のだとか。かなり強烈に「ホメること」を否定しています。
アドラー心理学においては,
人が他者を褒めることの目的は「自分よりも能力の劣る相手を操作すること」
であり,避けるべきことだと言うのです。
結局〈褒める〉というのはものごとを「縦の関係」で捉えた行為であり,アドラー心理学の推奨する「横の関係」=「対等な関係」から離れてしまうからダメだ!というわけです。
そうは言っても褒められたい
しかしそうは言っても,私も含め,誰しもがみな心の中に必ず「自分に価値があると思いたい」という欲求を持っています。
問題はこれとどう付き合っていけばいいのか,です。
結論から言えば,「嫌われる勇気」では〈褒める〉のではなく〈感謝〉で肯定感を満たせ,ということを言います。別に〈ホメる〉という行為をしなくても,相手の肯定感は高められる。それが〈感謝〉のパワーだ,というのがアドラー心理学を学んだ哲人の主張だったわけです。
一方,本書では 人を褒めろ!褒めまくれ! ときます。
ここの落とし所というか「じゃあどうしたらいいんじゃい!」「どっちを信じるんじゃい!」と考えたとき,結構難しいなあと。
本書とアドラー心理学ではそもそも「成功」の定義からして異なる印象ですし。
暫定的な結論
結局,この点に関して私の出した暫定的な結論は,「あいだを取る」といういかにも日本人らしいところに落ち着きました。
つまり〈感謝風褒め言葉〉がスマートに使えるといいんでしょうと。
ということで,明日からめっちゃ使っていきたいと思います。
私の本業の業界とも,とってもマッチした言葉です😌
いつか読み返すとしたら
5つの〈最後の課題〉,ここだけ確認しなおしたいですね。
ここに全内容の 8 割が入っていたと思います。
ToDo
本を読んだら〈気づき〉と〈ToDo〉をまとめろ!
と昔読んだ本の中で樺沢先生が仰っていた気がするので,まとめます。
- 誰かと会話する時,その人が大切にしていること,欲していることについて1度は考えるようにしてみる
- 無駄だな〜と自分で感じている時間をなるべく削る
- 自分が一番得意なこと,苦手なことを人に聞く
- 家族を喜ばせる
- とりあえず「勉強になりました!」「ありがとうございました!」
- 応募する。ポチる。
4つ目だけ全く具体的なアクションプランになってませんが・・とにかく何されたら嬉しいか聞いてみることからですかね。
6つ目に関しては,前から少し気になっていたチャレンジを,とりあえずやってみることに決めました。本書を読む前から考えていたことではあるのですが,後押しされました(それだけでも読んだ価値はあった)。
あと前からずっとポチろうポチろうと思ってポチってないのは DMM 英会話ですが・・まだポチれていません😅 始めることができたらレビューしたいと思います。
夢を叶えるゾウ I |水野敬也
ウサンくさい神様ガネーシャと青年の対話形式ですすむ物語。ガネーシャに課された〈課題〉を1つ1つ実践しながら,少しずつ成長していく主人公の姿を描きます。〈実際に・本当に・行動に移す〉ということの重要性を強い言葉で伝えてくれる名著。