|この記事は医療職の方向けです この記事では,尤度比(ゆうどひ)とは何か?医療現場ではどのように使われるのか?という点についてまとめます。 本項のまとめ 陽性尤度比:有病者が無病者と比べ何倍検査陽性になりやすいかという比 陰性[…]
この記事では,〈尤度比〉likelihood ratio の感覚を理解するのに極めて有用なツールである Fagan’s nomogram を無料統計ソフトの「R」で画像出力(▼)する手法をまとめます。
「R」を一度も触ったことがない人でも,5分程度で簡単にできてしまうので,是非トライしてみてください。
手順は以下になります。
- R を PC にインストールする
- R にパッケージをインストールする
- インストールしたパッケージを読み出す
- 関数をコマンド入力
では順に見ていきましょう!
R を PC にインストールする
まだ R を PC に導入していない人は,まず公式サイトで無料公開されている「R」をダウンロード&インストールしてください。
この公式ページに行くと,「Download and Install R」と書かれたセルの中に
- Download R for Linux
- Download R for macOS
- Download R for Windows
というところがあるので,使用しているパソコンの OS に合致したものをクリックしてください。
次のページでは,素直に最新版のバージョンのものをクリックすればダウンロードが始まります。
ダウンロードしたファイルをダブルクリックすればインストールが始まります。インストーラーは日本語も対応しています。
R にパッケージをインストールする
R をインストールしたら,早速 R を立ち上げます(▼)。
Fagan のノモグラムを描出する関数は “TeachingDemos” というパッケージの中に用意されていますので,このパッケージを R に導入する必要があります。これも,秒で可能です。
R を立ち上げたら,
> install.packages("TeachingDemos")
と入力して Enter。
─このセッションで使うために,CRAN のミラーサイトを選んでください─
というコメントが表示されて〈Secure CRAN mirrors〉というウインドウが立ち上がるので,
Japan (Tokyo) [https]
を選択します(※どれでもいいですが,日本回線の場合は素直にコレにします)。
これだけです。
あとは自動的にパッケージのインストールが進むので,ひたすら待ちます。
これでパッケージを R に導入できました。
パッケージを読み出す
導入したパッケージの中の関数を R の中で使えるようにするためには,一度そのパッケージを呼び出す必要があります。そのため
> library(TeachingDemos)
と入力し Enter します。
以上で準備は完了です。 “TeachingDemos” パッケージ中の関数が自由に使える状態になりました。
関数をコマンド入力
あとは関数を入力するだけです。
“TeachingDemos” パッケージの中で,Fagan’s nomogram を描出する関数は
> fagan.plot(x,y) # x = 事前確率, y = 尤度比
です。 たとえば
> fagan.plot(0.5, 20)
と入力すれば,事前確率 50 %,尤度比 20 の状況でのノモグラムと事後確率が描出されます(▼)。
また,
> fagan.plot(0.5, 0.21)
と入力すれば,事前確率 50 %,尤度比 0.21 の状況でのノモグラムと事後確率が描出されます(▼)。
このように Fagan’s nomogram で何パターンか出力していると,だいたい数字の感覚が掴めてくる‥かもしれません。
極端な事前確率であれば検査はしないハズ
なお余談ですが,現実には事前確率が 10 % を切る場合や 90 % を上回る場合に追加検査をする必要はありません。
普通はその時点で「ほぼ除外」あるいは「ほぼ確定」と考えるからです。
ちょうどよいのが,事前確率が 30 % 〜 70 % 程度と見込まれ,臨床判断が分かれるような状況です。
そういうときこそ,尤度比が十分に高い(あるいは低い)検査を用いることで,事後確率を十分に高める(あるいは低くする)ことが必要になります(▼図の緑斜線内)。
このあたりも踏まえつつ,尤度比に親しみをもって関われるようになりたいものです。
まとめ
R を立ち上げたら入力するコマンド:
> install.packages("TeachingDemos") #パッケージ導入
> library(TeachingDemos) #パッケージ読み出し
> fagan.plot(0.5, 20) # 事前確率 50 % 尤度比 20
入力するコマンドは上記の3行のみで,非常に簡単です。
ぜひ,色々な組み合わせを入力して遊んでみてください。