お知らせです。
地域医療ジャーナルに寄稿
当ブログで宣伝するのを完全に失念してしまっておりましたが,地域医療ジャーナルの 10 月号の寄稿をさせていただいておりました。
note版もご用意いただいています(▼)。
地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10) 記者:kei_e-cats 医師 こんにちは,エビカツ横…
今回のテーマ
今回取り扱ったテーマは,
片頭痛は抗体医薬でどのくらい防げるか?
です。
片頭痛界隈でここ数年のトレンドである,CGRP 標的治療薬の1つ,ガルカネズマブ(エムガルティ®︎)の第 III 相試験を吟味しました。
ガルカネズマブ(エムガルティ®︎)第 III 相
PICO-T
論文の構造(PICO-T)は以下です。
〈P〉参加者
- 国際頭痛分類 3β「片頭痛 migraine」と1年以上前に診断されている
- 18-65 歳(発症は 50 歳より前)
- 投薬前の baseline period において,80 % 以上のコンプライアンスで頭痛日誌を記載できた患者
- 4〜14 日の頭痛発作日(MHDs)があり,少なくとも月に2回の migraine attacks があること
〈I〉介入
- 1) ガルカネズマブ 120 mg 月 1 皮下注
- 2) ガルカネズマブ 240 mg 月 1 皮下注
〈C〉比較対照
- プラセボ 月 1 皮下注
〈O〉アウトカム
- 【主要】頭痛日数 MHDs の短縮
- 頭痛日数 MHDs がベースラインから 50〜75 %低下した人の割合
- MSQ-RFR(0-100)のベースラインからの変化量の平均
- 投薬を要した頭痛日数のベースラインから変化量の平均
- PGI-S(1-7)のベースラインからの変化量の平均
- 頭痛時間(hr)のベースラインからの変化量の平均
- MIDAS 総合点のベースラインからの変化量の平均
〈T〉時間
- 予防薬の washout 期間: 3-45 日
- baseline period:30-40 日(頭痛日誌を記載)
- ランダム化期間:1-6ヶ月 二重盲検下で治療。4 ヶ月追跡。
Result
結果を抜粋すると,以下のようになっていました。
- 1671 人のうち,最終 858 名(平均 40.7 歳,女性 83.7%) が組み入れ
- ベースラインの頭痛発作日数 MHDs は平均 9.2 日
- プラセボはベースラインから 2.8 日の月間頭痛日数減少
- ガルカネズマブ 120 mg 治療群は,ベースラインから 4.7 日 の月間頭痛日数減少(プラセボ比 P<0.01)
- ガルカネズマブ 240 mg 治療群は,ベースラインから 4.6 日の月間頭痛日数減少 (プラセボ比 P<0.01)
この結果をどう考えるか?
このように,ガルカネズマブは厳格な〈検証的試験〉で有意差をしっかり出しています。また,もう1つの同規模の RCT である EVOLVE-2(PMID: 29848108)でも有意差が出ています。
ここから,ガルカネズマブは片頭痛治療薬としてプラセボよりも「効果がある」ことはほぼ疑う余地がないと言えます。
実際,すでに承認申請は受諾され,本邦でも公費で処方可能な薬剤となっています。
目の前の患者さんに適用するには?
しかしここで重要なのは,
- 目の前の患者さんにそのまま適応できるデータか?
- そのまま適応できないなら,どの程度割り引いて考えるべきか?
といった考え方です。
第 III 相試験の結果を鵜呑みするのではなく,目の前の患者さんに適切に応用するには,データを正しく読むリテラシーが必要です。
今回の記事では,特に
- 試験対象者たちは目の前の患者さんと類似しているか?
- プラセボ結構効くじゃん問題
- 費用対効果
といったポイントに重点をおいて私見を述べてみました。
少しニッチなネタではありますが,是非ご一読いただければ幸いです。
地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10) 記者:kei_e-cats 医師 こんにちは,エビカツ横…
余談
また,余談ではございますが前回の地域医療ジャーナル寄稿記事が,アクセス数ランキングで読者大将にノミネート頂いています(▼)。
一本目の記事であり大変恐縮ですが,嬉しく思います。
10月は環境変化が大きく全然記事が書けていませんでしたが,また不定期で地域医療ジャーナル様にも寄稿させていただけたらなと思っています。
このブログの更新と youtube 動画の更新だけでもなかなか精一杯ですが,ニッチでもニーズのあるネタを提供し続けられるように学習を続けたいと思います!
今後とも何卒よろしくお願いいたします。