リクシアナ15mgの超高齢者への適応
今回,以下の論文を吟味しましたので,自分用のメモも兼ねて記事に残します。
論文の要旨は以下の通りです。
- 対象:80歳以上,出血ハイリスク群の日本人
- エドキサバン15mgとプラセボ比較
- 多施設共同 2重盲検 RCT(ELDERCARE-AF)
- Primary Oucome:脳卒中 & 全身塞栓症の発症(予防)
- 追跡期間の中央値 466日(IQR 293 – 708日)
- 主要アウトカムはエドキサバン群で有意に減少
- エドキサバン群 15/492(2.3% per patient-yr)
- プラセボ群 44/492 (6.7% per patient-yr)
- HR 0.34(95%CI 0.19–0.61)
- 1年単位の予防 NNT 24
- 死亡は有意差なし
- 臨床的に有意な出血は増える(NNH 15)
- 消化管出血は増える(NNH 67)
以下,感想を交えつつまとめていきます。
個人的にこの論文のポイントを一言でまとめると,
だと思います(あとは途中脱落 30 % をどう考えるか)。
問題提起
現場で実際困る問題にフォーカスした論文です。
85歳も超えてくると,frail があったり体重 40 kgくらいしかなかったり,腎機能障害があったり,出血歴があったり…という方は遭遇頻度が高いものです。
腎機能が悪くてもワーファリンを使えばいいわけですが,超高齢者は INR の調整もかなり微妙な匙加減を求められます。ちょっとしたことで過延長になったり,びびって低用量にしすぎて微妙な INRになったり…
そもそも end-of-life なところまで継続する意義があるのかどうか?悶々と考えたりもします。
risk/benefit のデータも限られており,結局「無治療」でいいのか「何か抗凝固する」方がいいのか,その判断は難しいものです。
実臨床に合致した RCT
今回の RCT はそうした日常臨床の困りどころというべきか,現行エビデンスのちょうど隙間で宙ぶらりんになっている部分に光を当ててくれています。
そもそも 85 歳などの超高齢者を集めた RCT なんてそうそう組めるものではないので,かなり挑戦的な研究です。
結局,超高齢者ばかりということもあり大量の途中脱落者を出してしまったりしている(後述)面もありますが,とにかく完遂して一定の結論を導いた,というだけでもイチ臨床医として興味深い試験でした。
論文内容の詳細
PICO-T
Participant:参加者
- 80 歳以上超高齢,日本人,非弁膜症性 Af
- CHADS2 スコア 2 点以上(75歳以上は既に満たしているので,CHF, HTN, DM,TIA/脳梗塞既往,のいずれかがあること,と取れる)
- 下記の少なくとも1つを満たすが為に,通常推奨 dose や INR 管理での経口抗凝固薬使用が推奨されない患者
- 推算クレアチニンクリアランスが 15–30
- Criticalな部位(頭蓋内等)の出血や腸管出血,臓器出血の既往
- BW45kg以下
- NSAIDsの継続的使用
- 抗血小板薬内服中
- |除外基準(Appendix 抜粋)
-
- 可逆性病態を期に2次性に起きた一過性 Af
- ランダム化前 8 週以内の経口抗凝固薬内服歴
- 直近 3 回中 2 回(4週以上間隔)の血液検査結果で INR 1.6 以上にコントロールされた Warfarin内服
- 下記のいずれかを満たす出血ハイリスク患者
- IC 時点で活動性出血がある
- IC 時点で未治療の消化管潰瘍がある
- Hgb<9,Plt<10万
- 遺伝的な出血性疾患
- ランダム化 30日前までの TIA/脳梗塞/MI 発症
- リウマチ性弁膜症,弁置換歴,IE,myxoma,左室内血栓,左房内血栓
- 薬物的ないし電気的除細動の予定
- コントロール不良の高血圧(持続的にsBP160, ないしdBP100)
- 推算CCr < 15mL/min(Cockcroft-Gault)
- IC 時点で抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)中,ないしDAPTの予定があり,単剤にできない
- 凝固異常を伴う肝機能障害
- NYHA分類 3 以上の重度心不全ないし UAP
- 2年以内に腫瘍の診断歴ないし治療歴
- 60日以内に他の trial drugsの内服歴
- その他 investigator や subinvestigator の判断
Intervention:介入
エドキサバン 15 mg 1日1回内服
Control:対照群
プラセボ 1 日 1 回内服
Outcome:評価項目
Endpoint | 内容 |
---|---|
Primary Efficacy Endpoint | 複合アウトカム:脳卒中 or 全身の塞栓イベント |
Primary Safety Endpoint |
Major bleeding(ISTHの定義に則る)
致死的出血,後腹膜出血,頭蓋内出血,眼内出血,髄腔内出血,関節内出血,コンパートメント症候群を伴う筋肉内出血,Hb2以上の低下で輸血を伴う出血 etc..
|
Secondary efficacy Endpoints |
|
Secondary Safety Endpoints |
|
- |Clinically relevant non-major bleeding
-
- 臨床的に明らかな出血で,治療を要したものを指す。
- 原則,画像検査などで確定されたもの。
- 以下を伴わない外来検査であればカウントしない
- 入院治療や,既に入院していた場合の退院延期
- 血液検査
- 画像検査
- 内視鏡検査(上部消化管内視鏡,大腸内視鏡,膀胱鏡,気管支鏡)
- Nasal cavity packing(いわゆるボスミン®︎ガーゼ的なやつ)
- 圧迫止血
- 超音波ガイド下の動脈瘤圧迫
- コイル塞栓術
- Cardioactive therapy
- 手術,外科的止血
- 臨床家の指示による trial drug の中断
- 臨床家の指示による concomitant therapy の変更(アスピリンの減量・中断など)
所感
- この clinically relevant non-major bleeding 「臨床的意義のある出血」をどう考えるかがポイントになりそうです。
- 複合アウトカムは許容できるパッケージと思います
Time
- 2016 年 8 月 5 日から 2019 年 11 月 5 日(Enroll)
- 追跡期間の中央値は 466日(IQR 293 – 708日)
- 4 週ごとに第 4 週目から 48 週目まで通院
- 以降は 8 週ごと試験終了までフォロー
Limitation
- ハイリスクな超高齢者を対象にしたため,30%(!) が途中脱落
- 日本人のみを対象とした試験なので,他の人種への外的妥当性は低い
- 先行研究の ENGAGE AF-TIMI 48 trial では,東アジア人のほうが他人種と比べて脳梗塞も塞栓イベントも出血イベントも多かった(=アジア人というだけでリスク因子の可能性があり,他人種への拡大解釈は注)
私見
COI
第一三共が出資・執筆補助
試験結果の吟味
以下具体的に結果を吟味していきます。
CONSORT ダイアグラム
─── Figure1 ───
- 1086 人が組み入れ(164 施設)
- 984人が合意を得てランダム割り付け(492:492)
- 途中脱落 151:150,うち死亡 66:69,辞退希望 81:75
- 死因は cardiovascular death が 41:41 で最多
- 特に心不全・心原性ショックが 22:19,次点 感染症 12:13
- 辞退理由は「出血ではない何らかの有害事象(37:34)」「モチベーションを失った or 通院に難(29:30)」(TableS4)が多い。「出血関連有害事象(2:4)」による辞退は両群とも少ない。
以下私見
- さすがに超高齢かつハイリスクな患者を対象にしていることもあり,両群ともかなりの脱落者数(約30%も脱落)
- とにかく死亡が多い(66 vs 69)
- 普通 RCT でこれだけ途中脱落していたら話にならないところを,「まあ平均年齢 87 歳ですしね…」と思えるのはこの研究ならでは?
- もちろんかなりの脱落数なので,結果の解釈には+αの解析が必要
- IPCW法や死亡を競合リスクとした競合リスク解析が appendixにあり(➡︎ その上で結論は不変)
- |死因について
- 心血管死亡が多いのは,元々 Af ベース+超高齢なので,それなりに心機能は悪い方が多かったのでしょうか(※ NYHA 3 以上の CHF は除外基準)。ベースラインの LVEF,LAD などのデータは個人的に気になるところですが,特に記載はなさそうでした。
背景因子の確認
─── Table1 ───
- 全員80歳以上の超高齢,平均 86.6歳(!) SD 4.2歳
- 平均体重 50kg(SD11)
- 平均 CrCL 36.3(SD 14.4)(※CrCL15未満は除外)
- CHADS2スコアは層化ランダム割付で均衡化(両群とも平均 3 点)
- PAF と PeAFは,両群とも半々程度
- 認知症は全体の 16.3%
- Frail が全体の41%(※定義後述)
- かつて抗凝固薬を飲んでいた人が43%
- 「通常のOACのレジメンでは不適となる理由」が具体的にどの項目でinclusion criteria を満たしたかについて,群間差はない
- Table S3:Severe renal impairment 40.2% vs 41.7%,Low BW(<45kg) 38.2% vs 37.8%,抗血小板薬内服 52.8% vs 54.7%
以下私見
- 重要な因子に関しては概ね群間不均衡なし
- 多少の偏りが出てそうな項目を挙げると,過去1年の転倒歴が 31.3% vs 37.8%,Robust 58.7% vs 51.4%,Frail 37.6% vs 44.1 %,認知症 14.2% vs 18.3%
- 上記は全てエドキサバンに有利に働きうる(エドキサバン群の方がわずかに健康エリート集団になっている)ものですが,脳卒中発症リスクとこれらの項目は直接的に強い関係性はないと思われるので,許容? ただし DVT/PE のリスクとしては差がありそうです。
- 年齢の割に認知症は少ない。少なくとも 4 週おきにフォロー外来受診ができる方たちなので,家族サポートがあったにしても,それなりの自立度でしょうか。
- Nursing home などにいる認知症の方たちは今回の対象にはほぼ含まれていなさそうで,そうした患者層への一般化可能性は要検討です。
- 抗血小板薬を 50 % 内服しているというのも気になる所。このご年齢に SAPT+ DOAC にしたということでしょうか……かなり攻めてますね。
- |本研究の Frail 定義
- 下記のアンケート項目ないし検査に対してそれぞれ 1 加点して,3 点以上となる場合 Frail とする。なお 0 点がRobust, 1–2 点が pre-frail の判定。
- 半年以内に意図せず 2–3kg以上の体重減少があった
- 直近2週間で,わけもなく疲れた感じがあった
- 週に何日程度,低/中強度の運動を行うか ➡︎ いずれも運動しないと回答
- 利き手で握力測定:男性26kg未満,女性18kg未満
- 5m歩行で1m/sを切る
アウトカムはどうか
─── Table 2 ───
- エドキサバン群 15人(2.3% per patient-year)vs プラセボ群 44人(6.7% per patient-year)が,脳卒中または全身の塞栓イベント発症
- 死因を問わない死亡:66 vs 69 (9.9 vs10.2% per patient-year)有意差なし
- その他:有意差なし
- Major bleeding:20 vs 11 (3.3 vs 1.8 % per patient-year);有意差なし
- サブグループ解析(FigS4)でも特に影響が大きいものなし
- 頭蓋内出血は 2 vs 4 (0.3 vs 0.6 % ppy)
- 消化管出血:14 vs 5 (2.3 vs 0.8% ppy),HR 2.85 (1.03−7.88)
- 大出血 or 臨床的有意な出血:97 vs 62 (17.7 vs 10.7% ppy),HR 1.65 (1.20−2.27)
- 臨床的有意な出血(単独):81 vs 52(14.5 vs 8.9 % ppy),HR 1.62 (1.14−2.30)
以下私見
- Primary outcomeは 2.3 vs 6.7 % per patient-yr で,要するに 100 人に 1 年投与するとイベント発生は 4.4 人分の差です。この ARR=4.4/100 の逆数を取り,NNT = 22.7(1年単位)と直線的概算(*)ができます。
- 同様に Major or clinically relevant non-major bleeding は概算 NNH = 14.3と算出できます。
- つまり15人ごとに出血し,23人ごとにイベントを1つ予防するという概算。「何らか臨床的意義のある出血」の方が「脳卒中/塞栓症の予防」より起きやすいということになります。
- ただ major bleeding の NNH 67 や消化管出血の NNH 67と比較すれば benefit>risk ではありますし,死亡や major bleeding では有意差もついていません。予防効果の benefit と比較すれば許容という論調でした。
- 問題は clinically relevant nonmajor bleeding が「まあまあな出血イベント」も含みそうという部分です。頭蓋内出血や輸血がなければ割と何でもあり。臨床家は risk/benefit を慎重に考える必要がありそうです。
- 臨床的に有意な出血は プラセボでも 10.7 %と多く,実薬群は 17.7 %。高齢ハイリスク群はやはり怖いです。
- また major bleeding は有意差なしとはなっていますが,実数としては明らかに多く,20(3.3 % ppy) vs 11(1.8 % ppy)。サンプルサイズ不足によるβエラーで,症例が増えれば有意となっていた可能性があります。
$$ 1/\{ {(1-e^{-0.067})-(1-e^{-0.023})} \} $$
となります。これだと NNT=23.77 → 24 ですが,ざっくり暗算と大きく変わりません。イベントの頻度が高い場合,上記のような直線的暗算だとズレが大きくなってしまいますが,このくらいの頻度のイベントであれば概算で代用可能そうです。出血 NNH も同様に計算すると 16 になります。
※ 詳細【Clincalc】参照
KM曲線
─── Figure2 ───
以下私見
- Figure2A もFigure2B も,縦軸を普通にとるとイベント発生率がいずれも少ないので,拡大表示されています(針小棒大)。
- Figure2Aが primary endpointの累積罹患率をプロットしたグラフですが,結構最初の1年(4〜12ヶ月あたり)で stroke/塞栓症の罹患率の群間差はグッと広がってる印象があります。イベントが起きる人は割と早期に起きちゃうのかもしれません。
- Figure 2B は major bleeding の累積罹患率をプロットしたグラフです。割と最初のうちは差がつかず徐々に出血してくるような分布になっています。見た目上は差のある2曲線ですが,結局有意差がないので OK,という論旨になっています。
- ただ先述した通り,もう少し長い期間・多い症例を追跡できていれば,このまま曲線の差が広がっていき,有意差がついた可能性は十分にあると思います(24ケ月以降のデータがアテにできないグラフになっている点に注意)。
- スタートが 87 歳なので,3年4年の継続追跡をこの試験に求めるのは酷だとも思いますが…
- |害はしばしば βエラーとなる
- 統計学的有意差とサンプルサイズの関係についてはよく考える必要があります。今回に限らず第 III 相試験というものはとかく「効能」を示す為にデザインしているため,サンプルサイズは primary efficacy outcome を示すために必要十分となるよう計算(power analysis) されています。つまり,その他の項目──特に害──で有意差を出すためのサンプルサイズにはなっていません。有意差がつかなかった major bleeding については,「本当に差がない」のではなく,単純に検出力不足であった可能性を考えるべきです。もう少しだけサンプルサイズが大きければ,検出力が高まって有意差が出た可能性は十分あります。
サブグループ解析
─── Figure3 ───
primary endpoint のサブグループ解析
以下私見
- 95%CI は HR 1.0 を跨いでいたりいなかったり色々ですが,概ね一貫してエドキサバン better 側に振れています。
- サンプルサイズが細分化されたサブグループで有意差が消えるものが出てくるのは統計的必然ですから,こういう中規模程度の RCT のサブ解析は,ざっと流すくらいでよいと思っています。
- シンプソンのパラドックスみたいな現象が起きちゃってないかだけ確認して,読み飛ばします。
本文の内容の吟味は,以上です。以下は個人的な感想です。
全体通しての所感
大変興味深い試験でした。
現場の疑問に合致
まず,検証仮説が現場の疑問に合致していて良かったです。
下手にワーファリンなどと比較せず「プラセボと比較」というデザインも分かりやすかったです。実際 今回の対象患者層だと,臨床家もワーファリンを入れず無治療という選択を十分とりえますから実臨床に即したデザインだと感じます。
この層の対象者に抗凝固薬を入れた方がいいのか,控えた方がいいのか,まともな前向きデータはほとんどなかったので重要なデータが得られたと思います。
Risk/benefitは要検討
ただ,このデータを見て
脳梗塞予防効果があるので,超高齢者の Af にはこれからエドキサバン 15mg をバンバン処方しましょう!
となるかと言われれば,なかなか,そうもいきません。問題は「出血リスクの増加」をどこまで許容するかという点です。
Major bleeding もきっと差あり
Major bleeding の差は not significant なので許容内という論調でしたが,これは先述した様に「イベントが少なかったため今回の trial では統計学的有意差を出すだけの検出力がなかった」,つまり βエラー という可能性が高いと考えられます。もう少しサンプルサイズが大きければ普通に有意差が出ていたのではないかと考えられます(実際,イベントの実数は2倍近い)。
リアルワールド(という膨大なサンプルサイズに)に出せば,まず有意差をもって major bleeding は増えると思っておいた方が無難でしょう。
non-major bleedig なら良いのか
また,個人的には clinically relevant non-major bleeding + major bleeding のイベント数も割と無視できない多さだと感じます。実数 17.7 % も多いですし,NNH 15 も多い。
clinically relevant non-major bleeding は内容がヘテロなので一概にどの程度のリスクか言いにくいのが問題ですが,輸血を要するレベルや頭蓋内出血でなければ広く包含しているので,臨床的にヒヤっとするイベントも入っているかもしれません。
こうした risk/benefit の中で「どこまで脳梗塞を本気で予防したいか?」というのは,個別症例の背景による部分が大きくなりそうです。
医療費の問題も
また,リクシアナ 15 mg は 2020 年 9 月現在,1 錠 224 円です。
cost-effectiveness は?
本邦ですと,この御年齢の高齢者は基本 1 割負担なので,もし処方するとしたら毎日 200 円分くらいは公費からの拠出になります。
要するに平均 87 歳で心房細動のある(+α 出血素因のある)高齢者に,毎日200円(=73000円/年)ずつ公費を投入すると,23 人に 1 人くらいは追加で脳卒中予防(や塞栓症予防)の益を享受する一方,15 人に 1 人くらいは余分に対応を要する出血を起こすということです。
結局出血に対して処置や入院,となるとそれなりの医療費がかかりますし,患者さんも体調を崩して寿命を縮めてしまうかもしれません(ベースが87歳なので,1イベントでも結構尾を引く可能性)。
そう考えると費用対効果が優れた投薬とは言い難い印象です。
ただ,出血イベントは脳卒中と違って後遺症を残したりするものではないので,major bleeding でなければ許容できると言う意見もあるでしょう。人によって個別の判断を要するところです。
ナラティブ次第
行動経済学的な話になってきますが,処方時にはどう IC するかもポイントになりそうです。 以下の2パターンで情報提供を行うと,それぞれ何%が内服を希望するか,気になるところです。
パターン1
このお薬を飲むと,脳梗塞になるリスクが,飲まない場合と比べて 3 分の 1 にできます。ただ,出血は 1.6 倍くらいに増えてしまいます。輸血や命に関わる出血は,誤差の範囲の差くらいしかありませんでした。どうでしょう,定期内服しますか?
パターン2
このお薬,100 人が 1 年間飲むと,1年間で 6.7 人が脳梗塞になるところを,2.4 人まで減らしました。ただ,何か対処を要する出血は,11 人に対して 18 人に増やしました。ちなみに輸血したりするくらいの大出血は,100 人中 1.8 人から 3.3 人に少し増えましたが,これは誤差範囲とされています。どうでしょう,定期内服しますか?
さらに
因みにこのお薬,1日220円(自己負担 22円),1年間で 73000円(自己負担 7300 円)です。
という情報を提供してみて,反応が変わるかどうか。この辺りも医療者の匙加減になってしまいそうではあります。
まとめ
- 平均 87 歳の出血ハイリスクな心房細動患者さんに
- エドキサバン 15 mg を導入して 1〜2 年追いかけると
- 脳卒中は,予防できる(NNT 23)。
- 出血は,増える(臨床的意義のある出血 NNH 15)。
- Major bleeding は,今回は有意差なしだが,検出力不足の可能性。
元データを踏まえたら,あとは narrative-based な議論になるかなと思います。
- 次頁はおまけです。試験が組まれた背景,Methodsのポイント,漫談です。
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