【解説】標準偏差とは何か|計算方法は?|やわらか統計学

本項の解説内容

  • 標準偏差 SD はデータのバラツキ具合を表す指標(=散布度)の 1つ
  • 計算方法:〈平均からの偏差〉の〈二乗平均〉の平方根
  • 標準偏差が大きい = 平均から離れたデータが多い = 散らばり大
  • データが正規分布に沿うとき,95 % は平均 ± 2SDに含まれる

ミケ

今回は,データのバラつきの指標として最も重要な
標準偏差 SD について考えてみます

シロ

わたし数式見てるとトリップしちゃうけど大丈夫?

ミケ

……という人にも分かりやすくお伝えするため,なるべく数式を用いずに「国語的な解釈」を主軸に解説してみます
要所では数式も併記しています:クリックで展開
この記事の内容は動画にもしています(▼)。

標準偏差:バラツキの指標

標準偏差 SD;standard deviation はデータのバラツキの度合いを表す指標

の 1つです。

そのようなデータのバラツキの指標のことを〈散布度〉と呼びます。

前回の記事で述べましたように,多くのデータを集めたとき,その分布についてグラフを用いずに一言で説明するには,〈代表値〉と〈散布度〉を併記すれば良いのでした。

なぜ〈代表値〉だけではダメかというと,同じ〈代表値〉をとるデータの集まりであっても,いろいろなパターンの分布が考えられるためです。

代表値:平均値や中央値や最頻値のこと。前記事参照(▼)
代表値の復習はコチラ

本項で解説する内容平均値も中央値も,いずれもデータ全体の〈代表値〉データの分布が偏っているとき:中央値 medianデータの分布に偏りがないとき:平均値 mean〈代表値〉と〈散布度〉を併記すればデータの分布を一言で説明できる[…]

平均値と中央値

代表値の限界

例として,以下の 3 つのデータの代表値について考えてみましょう。

【例】8人のバイトの勤続年数を集計

  • 職場 A:3, 3, 5, 5, 5, 5, 7, 7(年):平均 5 年
  • 職場 B:1, 2, 3, 5, 5, 7, 8, 9(年):平均 5 年
  • 職場 C:5, 5, 5, 5, 5, 5, 5, 5(年):平均 5 年

いずれも分布は全く異なるデータですが,全て平均 5 年の職場です。それどころか〈中央値〉や〈最頻値〉もすべて 5 年となっています。

ここから明らかなように,〈代表値〉だけを人に伝えても「データの分布のイメージ」は伝えられません。

職場 A も職場 B も職場 C も「平均勤続年数5年の職場」「勤続年数の中央値が5年の職場」なのです。

しかし〈代表値〉に加えて〈散布度〉を併記すれば,データの分布のイメージが一段と伝わりやすくなります。

散布度の種類

〈散布度〉の指標には,今回主に取り扱う〈標準偏差 SD〉のほかにも〈分散〉〈平均偏差〉〈範囲〉などがあります。

おそらく,最も直感的に理解しやすいものは〈範囲〉です。これはそのままの意味で,最大値と最小値を示すだけのものです。

先ほどの例で,実際に代表値〈平均〉と散布度〈範囲〉を併記してみましょう(▼)。

【例】8人のバイトの勤続年数を集計

  • 職場 A:平均 5年(範囲:3年〜7年)
  • 職場 B:平均 5年(範囲:1年〜9年)
  • 職場 C:平均 5年(範囲:5年〜5年)

こうすれば,単に「平均 5 年の勤続年数」と言うだけでは伝えられない情報,つまり「それぞれの職場でどの程度,勤続年数のバラツキがあるか」イメージできるようになります。

上記の様に〈範囲〉は非常にわかりやすい概念です。

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標準偏差 SD の使い方

〈範囲〉と同様に〈散布度〉の一種である〈標準偏差 SD〉も,扱い方はほとんど同じです。

以下では,実際に〈標準偏差〉とは何なのか,どの様にして算出するものなのかを取り上げていきます。

ちなみに〈代表値〉や〈散布度〉の様にデータの特徴を要約して記述するものを〈要約統計量〉と総称します。

標準偏差の求め方

まず数学的な定義から確認してみましょう。

標準偏差は,以下の手順で求めることができます。

標準偏差の求め方

  1. 得られた全データの〈平均〉を求める
  2. 個々のデータと〈平均〉との差:〈偏差〉deviation を求める
  3. 個々のデータの〈偏差〉の二乗:〈偏差平方〉squared deviation を求める
  4. 〈偏差平方〉の平均:〈分散〉variance を求める
  5. 〈分散〉の正の平方根をとる:それが〈標準偏差 SD〉

一瞬ギョッとしてしまいますが,実際に計算してみると,個々の計算はさほど難しくありません

実際に STEP を踏んで計算していきましょう!

STEP1:「平均」を求める

Aクラスの 8人の学生と,B クラスの 8人の学生を対象に,ある同一の数学テストを行った状況を考えてみます。

この時のテストの点数は

Aクラス:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点


Bクラス:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点

でした。

まずはSTEP1です。それぞれのクラスについて,平均を求めてみましょう。

それぞれ普通に総和を8で割ればOKです。

そうすると,このテストの平均点は,AクラスもBクラスも 50 点になっています。(ちなみに中央値も最頻値も 50 点です)

しかし同じ 平均 50 点とはいっても,Aクラスと Bクラスではかなり点数のばらつきに差がある様です。

そこでAクラスとBクラスにおける,テストの点数の〈散布度〉である〈標準偏差〉を定量して比較してみることにします。

なお上記例は少ないデータ数ですから,ぱっと見でも「Aクラスは平均値付近に得点が収束している」だとか「Bクラスはかなりばらつきが大きい」だとかいう特徴がすぐにわかります。しかし実際には 100 人や 200 人,もっとはるかにたくさんのデータを扱うので,そうはいかないことが多いはずです。そういう状況でこそ〈散布度〉による要約が威力を発揮します。

STEP2:〈偏差〉を求める

A,Bクラスそれぞれのテストの得点について,
〈偏差〉を求めてみましょう。

〈偏差〉とは,個々のデータと平均値との差 です。

数式
$$偏差 = x_i-\overline{x}$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)
実際には〈平均からの偏差〉というのが正しいのですが,
以下では特に断らない限り
〈偏差〉=〈平均からの偏差〉と読み替えて下さい。

AクラスもBクラスも平均点は50点ですので,
偏差は下記の様になります。

【Aクラス】
素点:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点
偏差:-10点,-5点,0点,0点,0点,0点,+5点,+10点


【Bクラス】
素点:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点
偏差:-40点,-30点,-20点,0点,0点,+10点,+30点,+50点

STEP3:〈偏差平方〉を求める

偏差平方は,先ほど求めた〈偏差〉をそれぞれ二乗するだけです。

数式
$$偏差平方 = (x_i-\overline{x})^2$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)

以下のように,簡単に求められます。

【Aクラス】
素点:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点
偏差:-10点,-5点,0点,0点,0点,0点,+5点,+10点
偏差平方:100,25,0,0,0,0,25,100(単位は点2


【Bクラス】
素点:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点
偏差:-40点,-30点,-20点,0点,0点,+10点,+30点,+50点
偏差平方:1600,900,400,0,0,100,900,2500(単位は点2

STEP4:〈偏差平方〉の平均 =〈分散〉を求める

ここで,STEP3 で算出した〈偏差平方〉の平均値を求めます。

まずは〈偏差平方〉の総和(偏差平方和)をとると,

Aクラス 250 点2(100+25+0+0+0+0+25+100),
Bクラス 6400 点2(1600+900+400+0+0+100+900+2500)

となっていますので,これをデータ数(n)で割りましょう。

これで〈偏差平方の平均〉=〈分散〉を求めることができます。

AクラスもBクラスも n=8 人のデータでしたから,

Aクラスの点数の〈偏差平方の平均〉= 250/8 = 31.25 点2
Bクラスの点数の〈偏差平方の平均〉= 6400/8 = 800 点2

となります。

これが〈分散〉です。〈分散〉は数式上では,σ2s2 で表されます。

数式
$$\begin{eqnarray*}分散 s^2 &=& 偏差平方の平均 \\ &=& \frac{(x_1-\overline{x})^2 + (x_2-\overline{x})^2 +…+(x_n-\overline{x})^2}{n}\\ &=& \sum_{i=1}^n \frac{(x_i-\overline{x})^2}{n} \end{eqnarray*}$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)

名前から想像される通り,この〈分散〉も立派な〈散布度〉つまり「バラツキの指標」の 1つです。

というより〈分散〉は,標準偏差 SD と同等以上に,〈散布度〉の中でもかなりの代表格です。

なぜこんなにもまどろっこしく算出したものが〈分散〉という代表的な〈散布度〉の地位を確立したのか,この点については後ほど述べます。

ひとまずあと一歩ですので,このまま〈標準偏差〉を求めてしまいましょう。

STEP5:〈分散〉の正の平方根が〈標準偏差〉

実は〈分散〉まで算出してしまえば,もう標準偏差は求められたも同然です。

標準偏差 SD は,ただ〈分散〉の正の平方根をとったものだからです。

Aクラスの得点の〈分散〉は 31.25 点2
Bクラスの得点の〈分散〉は 800 点2でしたので,
それぞれの正の平方根を求めれば SD が求められます。

Aクラスの標準偏差 SD:√31.25 = 5.59 点
Bクラスの標準偏差 SD:√800 = 28.28 点

こうして,Aクラスの学生の点数とBクラスの学生の点数を簡潔に述べることができる様になりました。

Aクラスの点数:平均 50 点(標準偏差 5.6, 範囲 40-60)

Bクラスの点数:平均 50 点(標準偏差 28.2, 範囲 10-100)

こうしてみると,格段に情報量が増えたことが実感いただけると思います。これが〈代表値〉と〈散布度〉を併記することの強みです。

生データをいちいち散布図などの図表にまとめずとも,データの中身の概要を伝えることが可能です。

尚ここで最も着目したいのは,〈分散〉は単位が 2 乗になってしまっていたのが,〈標準偏差 SD〉では正の平方根をとることによって,単位を元のデータのものと揃えることができているという点です。

標準偏差の数式

なお,〈標準偏差〉は,数式上では s や σ で表します。

いっぽう〈分散〉は s2 や σ2 で表すのでした。〈分散〉が〈標準偏差〉を平方したものであることは,既に織り込まれているわけですね。

数式
$$\begin{eqnarray*}標準偏差 s &=& \sqrt{分散 s^2} \\&=& \sqrt{偏差平方の平均} \\ &=& \sqrt \frac{(x_1-\overline{x})^2 + (x_2-\overline{x})^2 +…+(x_n-\overline{x})^2}{n}\\ &=& \sum_{i=1}^n \sqrt \frac{(x_i-\overline{x})^2}{n} \end{eqnarray*}$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)

なぜ〈偏差平方の平均〉が〈分散〉なのか?

さて話は戻りますが,なぜわざわざ〈偏差平方の平均〉(=偏差の二乗平均)などという非常〜〜にまどろっこしい概念に〈分散〉などという “最もそれらしい” 名前が付けられているのでしょうか。

標準偏差はさらにその平方根であり,一見すると何がなんだかという感じです。

そもそも〈分散〉や〈標準偏差〉にはどういう意味があるのでしょうか。なぜこのような手法で算出するのでしょうか。

この点について,もう少し検討していきましょう。

データのバラツキをどう定量するか?

もう一度先ほどのAクラスとBクラスのテストの成績を見てみましょう。

【Aクラス】
素点:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点
偏差:-10点,-5点,0点,0点,0点,0点,+5点,+10点
偏差平方:100,25,0,0,0,0,25,100(単位: 点2


【Bクラス】
素点:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点
偏差:-40点,-30点,-20点,0点,0点,+10点,+30点,+50点
偏差平方:1600,900,400,0,0,100,900,2500(単位: 点2

この時,「Bクラスの方がAクラスよりも点数がバラついているよ」ということをなんらかの数値で定量化して示したい,と考えてみます。

そこで着目するのが〈偏差〉です。

〈平均からの偏差〉が大きいデータというのは,つまるところ平均から大きくズレた「外れ値」だということです。

そういう外れ値が多ければ多いほど,全体としてもデータの「散らばり」が大きくなるのは間違いなさそうです。

実際〈分散〉は〈平均からの偏差の二乗値の平均〉ですから,そういう外れ値がたくさんあればあるほど,大きい値をとります。

しかしここでわざわざ「二乗の平均」を〈分散〉と定義したことについては異論があるかもしれません。

なぜ二乗する必要があったんだ!
二乗なんかしなくてもいいじゃろがい!

と怒り心頭です。誰だってそーなります。私もそーなります。

単純に〈平均からの偏差〉の総和を求めたり,その平均を取るのではいけなかったのでしょうか?

偏差の総和は〈散布度〉にならない

もう一度例のデータを見てみます。

【Aクラス】
素点:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点
偏差:-10点,-5点,0点,0点,0点,0点,+5点,+10点
偏差平方:100,25,0,0,0,0,25,100(単位は点2


【Bクラス】
素点:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点
偏差:-40点,-30点,-20点,0点,0点,+10点,+30点,+50点
偏差平方:1600,900,400,0,0,100,900,2500(単位は点2

「偏差の総和」や「偏差の平均」だって,大きければ大きいほど「データのばらつきが大きい」と言えそうな感じはあります。

しかし実際に計算してみますと,そうはなりません。

必ず

(平均からの)〈偏差〉の総和 = 0
(平均からの)〈偏差〉の平均 = 0

となってしまうのです。

上の具体的なデータを見て頂ければ一目瞭然です。

プラスの値とマイナスの値がちょうど打ち消し合うため,どんなデータであれ偏差の総和は絶対にゼロです。

「平均値からのズレ」を全て足した時,最終的に打ち消しあってゼロにならないのであれば,その〈平均値〉はもはや〈平均値〉と言えません。総和したとき「ズレ」が残らないのは自明です。

その点「総和」でなく「二乗和」であれば,二乗する過程で符号が必ず正になりますので,ゼロになることがありません。

要するに〈偏差の平均〉は必ず0となるため〈散布度〉になりえない。そのため〈偏差平方の平均〉を求める必要があったのです。

〈偏差平方和〉ではダメなのか?

では〈偏差平方の平均〉ではなく,その手前の〈偏差平方の総和〉ではダメだったのでしょうか?なぜこの時データ総数 (n) で割る必要があったのでしょうか?

再確認ですが〈偏差平方和〉をデータ総数 (n) で割った〈偏差平方の平均〉のことを〈分散〉と定義するのでした。

これも実際に計算してみるとわかることですが,〈偏差平方和〉は当然,データの数が増えれば増えるだけ大きくなってしまうというのが問題です。

バラツキが小さくても,データ数が増えれば増えるだけ大きな数値になってしまうため,バラツキの指標としては不向きなのです。

A組が 24 人クラスで,B組が 8 人クラスだったら,たとえ B組の点数の方がバラツキが大きくても,A組の点数の〈偏差平方和〉の方が大きくなってしまう可能性があります。

そこで〈偏差平方の平均〉をとります。

これであれば,データ1つ1つの〈偏差平方〉が平均的にどの程度なのか,ということを示すことになり,その問題は解決されます。

〈偏差の絶対値の平均〉ではダメなのか?

ところで「符号を正に揃える」だけであれば,二乗する以外にも手段があったはずです。みんな大好き「絶対値」ですね。

〈偏差の二乗の平均〉ではなく〈偏差の絶対値の平均〉ではダメだったのか? というのも当然の疑問になると思います。

実は,これは“ダメ“ではありません。

この〈偏差の絶対値の平均〉にもしっかり名前がついていて、
〈平均偏差〉と言います。めちゃくちゃそのまんまですね。

絶対値は扱いづらい

〈平均偏差〉も立派な〈散布度〉,つまりデータのバラツキの指標です。

しかし絶対値というのは,数学的に扱いにくいものです。中身を計算して正の値だったらそのまま,負の値だったら正にする,といった個々の処理が必要になり煩雑です。

いっぽう二乗であれば絶対に 0以上の値になりますので,数学的に扱いが楽です。

後述しますが,他にもいくつかの理由があり,結局〈偏差の絶対値の平均〉ではなく〈偏差平方の平均〉=〈分散〉の方が,頻回に使われる指標となっているのです。

分散と標準偏差

ここでもう一度,語句の定義をまとめます。

分散と標準偏差

  • 〈分散〉 = 各データの〈平均からの偏差〉の二乗平均
  • 〈標準偏差〉 = √〈分散〉

ここで,標準偏差 SD の導出は〈平均からの偏差〉を二乗 ➡︎ 総和 ➡︎ n数で割る ➡︎ 正の平方根をとるというプロセスになっていることに注目ください。

いちど 2乗したものを,わざわざ最後に平方根をとって戻しているということです。

一体なぜこのようなまどろっこしいことを行っているのでしょうか。

数式
$$\begin{eqnarray*}標準偏差 s &=& \sqrt{分散 s^2} \\&=& \sqrt{偏差平方の平均} \\ &=& \sqrt \frac{(x_1-\overline{x})^2 + (x_2-\overline{x})^2 +…+(x_n-\overline{x})^2}{n}\\ &=& \sum_{i=1}^n \sqrt \frac{(x_i-\overline{x})^2}{n} \end{eqnarray*}$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)

〈分散〉の平方根をとる理由

実は,〈分散〉は数学的には意義深く大切な指標なのですが,実生活では直観的に理解しづらく,使いづらい概念です。

先ほどの例で言えば,〈分散〉は単位が 点2 となってしまっているため,

平均50点,ばらつきは 分散が 800 点2でした!

と言われてもはっきり状態がイメージできません。
どう考えても

平均50点,ばらつきは 標準偏差が 28.3点でした!

と言った方が伝わりやすいハズです。

単位がそろうと解釈しやすい

標準偏差 SD は〈分散〉と違って単位の次元がデータと同じなので,イメージがしやすいのが利点です。

というよりむしろ,元のデータと単位の次元を合わせるために,わざわざ〈分散〉の平方根をとったものが〈標準偏差〉とすら言えます。

なお,ここでもやはり,先述した〈平均偏差〉ではダメなのか?という疑問が湧くかもしれません。

〈偏差の絶対値の平均〉であっても単位は揃っていますし,定義上もわかりやすいです。

しかし実際には,標準偏差を用いることの方がはるかに一般的です。これは〈平均偏差〉にはない有用性が〈標準偏差〉にあるからに他なりません。

その最たるものとして,「分散や 標準偏差は《正規分布》と非常に関連深い概念である」ということが挙げられます。

標準偏差が便利な場面

95%ルール

あるデータが正規分布に沿った分布になっている時,

得られたデータの 95 % は,平均 ± 2 SD の間に存在する。
※ 厳密には ± 1.96 SD

ということが知られています。

これが〈散布度〉として
〈平均偏差〉ではなく〈標準偏差〉が好まれる理由の最たるもの,
と言えるかもしれません。

なぜそうなるのか?という点については別項に譲りますが,
ひとまずここでは《正規分布》とはそういうものとご理解ください。

■ 正規分布

図 from wikipedia

正規分布は図のようなベル型の分布で,σ は 標準偏差 SD を指します。

便利な 95% ルール

例えば正規分布に近い分布を取り易いデータとして
「身長の統計」や「テストの点数の統計」があります。

そのような指標であれば,95%ルールが適応しやすく,分布のイメージが非常に行いやすくなります。

ある高校の男子高校生の平均身長が 171 cm であったとして,〈標準偏差〉が 8 cm と示されていれば,
その高校の男子の身長は 95 % が 171 ± 16 cm の中にあると一瞬で分布を理解することができるわけです

とても便利ですよね。

しかし,あくまでもこれは《正規分布》に近い分布の時にしか成立しない特殊ルールであることを理解する必要があります。

正規分布以外では 95%ルールが成立しない

例えば先ほどの16人のテスト結果を振り返ってみます。

Aクラス:40点,45点,50点,50点,50点,50点,55点,60点
Bクラス:10点,20点,30点,50点,50点,60点,80点,100点

となったテストの結果について,
代表値と散布度として〈平均〉と〈標準偏差〉を持ち出したとすると
下記のように求められるのでした。

Aクラスの点数:平均 50 点(標準偏差 5.6, 範囲 40-60)
Bクラスの点数:平均 50 点(標準偏差 28.2, 範囲 10-100)

しかしここで ±2 SD を求めてみますと,

Aクラスの平均 ± 2SD = 50 ± 11.2 ➡︎ 39 〜 61
Bクラスの平均 ± 2SD = 50 ± 56.4 ➡︎ -6.4 〜 106

となってしまいます。

Aクラスも最大得点と最小得点を超える結果になってしまっていますし,Bクラスなんてマイナスなどという意味不明な点数が出てしまっています。

これは単に,いずれも正規分布ではないからです。

正規分布の特別ルール

95 %ルールはあくまで「正規分布の時」だけの特別ルールに過ぎません。

外れ値が多かったり,正規分布以外の分布を取るデータにおいては,そのようなルールは成り立たないのです。

ですから歪んだ分布をとる場合には,〈標準偏差〉ではなく「範囲(最小値〜最大値)」や「四分位範囲 IQR」を散布度として表示することが一般的です。

その方がデータの分布によらないため,誤解が少ないためです。

まとめると以下のようになります(▼)。

一般的な要約統計量の使い方

  • 正規分布のとき:平均と標準偏差を用いる
  • 正規分布でないとき:中央値と四分位範囲(または範囲)を用いる
|四分位範囲 IQR とは
  • 標準偏差や分散と同じく,データの散らばりを表す指標〈散布度〉の 1 つ
  • データの真ん中 50 % 部分の範囲を表す
データを小さい順に横並びにして,4 分の1ずつに当たる点を小さい側から順に[第1四分位数,第2四分位数,第3四分位数]とする。このとき,第 1 四分位数から第 3 四分位数まで,つまり「データの真ん中 25〜75 % の合計 50% 部分」のこと。

チェビシェフの不等式

なお「正規分布でない場合」にも,標準偏差 SD の一定程度の解釈は可能です。

〈チェビシェフの不等式〉を用いた数式上の証明において,どのような分布のデータであっても,以下が成立することが知られているからです。

どのような分布でも以下は “最低限” 成立

  • 平均 ± 2SD 内に少なくとも約75%のデータ
  • 平均 ± 3SD 内に少なくとも約89%のデータ
  • 平均 ± 4SD 内に少なくとも約94%のデータ

ということで,

  • 正規分布のときの ±2SD:95%ルール
  • それ以外のときの ±2SD:75% “以上” ルール

と覚えてしまっても良いかもしれませんね。

まとめ:標準偏差とは?

標準偏差 SD に関するまとめ

  • 標準偏差 はデータのバラツキ具合を表す指標(=散布度)の 1つ
  • 標準偏差 は〈平均からの偏差の2乗平均:分散〉の平方根
  • 標準偏差 が大きい = 平均から離れたデータが多い = 散らばり大
  • データが正規分布に沿うとき,95 % は平均 ± 2SDに含まれる
    • そのような場合,平均と標準偏差を併記するのが一般的
    • そうでない場合,中央値と(四分位)範囲を併記するのが一般的
数式
$$\begin{eqnarray*}標準偏差 s &=& \sqrt{分散 s^2} \\&=& \sqrt{偏差平方の平均} \\ &=& \sqrt \frac{(x_1-\overline{x})^2 + (x_2-\overline{x})^2 +…+(x_n-\overline{x})^2}{n}\\ &=& \sum_{i=1}^n \sqrt \frac{(x_i-\overline{x})^2}{n} \end{eqnarray*}$$
\(x_i = 個々のデータの値\),\(\overline{x} = データの平均値\)

受験業界などで親しみ深い「偏差値」の計算にも
標準偏差が用いられています。

「偏差値」や「z 点」とは何か? 等についても別記事で解説してみたいと思います。

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